「自然光でモネの睡蓮を見たい」。
その夢は地中美術館をもって現実となり、美術史においては伝説となるだろう。
今から13年前、筆者は仕事で関わりのあったベネッセコーポレーションの広報部より、2004年7月に開館した地中美術館と直島の魅力を聞き、翌2006年にかの地を訪れた。
瀬戸内海を望むのどかな時間の中に、自然の一部のようにアートが佇む。地図を見て探すこともなく歩いているとふと出会う。
「世界に類を見ないこの場所は、いったいなぜ、どのようにして生まれたのか?」
この島を訪れた人は皆、この疑問を持つだろう。
『直島誕生 過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」全記録』は、"Kyoto"、 "Shibuya"に次いで世界各地から観光客が押し寄せる「現代アートの聖地 "Naoshima"」誕生までの経緯を、10年の沈黙を破り仕掛け人がついに明かす圧巻のドキュメンタリーだ。
『直島誕生 過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」全記録』 1,728円(税込)
株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン 発行 / 秋元雄史 著
筆者撮影。筆者が訪れた2006年より施設も作品数も増えている
「一生に一度は訪れたい場所」として、国内のみならず世界中から観光客がこぞって押し寄せる、瀬戸内海に浮かぶ島・直島。
そこは、人口3000人ほどの小さな島ながら、草間彌生や宮島達男、安藤忠雄ら錚々たるアーティストたちの作品がひしめきあう「現代アートの聖地」となっている。
本著では、その知名度とは裏腹にほとんど語られてこなかった「アートの島・直島」誕生の経緯を、1991年から15年間ベネッセで直島プロジェクトを担当し、「家プロジェクト」や地中美術館などの画期的な作品群・美術館を生み出した仕掛け人が、2006年に島を離れて以降初めて、自らの経験をもとに語り尽くしている。
世界が注目する「現代アートの聖地」直島とは?
岡山県と香川県の間、瀬戸内海に浮かぶ人口約3000人の島。
草間彌生や宮島達男、内藤礼、大竹伸朗ら日本を代表する現代アーティストによる大型の作品群が林立するほか、ウォルター・デ・マリアやジェームズ・タレル、ブルース・ナウマンなど世界的な現代アーティストらの作品も数多く展示され、「現代アートの聖地」として世界的に知られている。なかでも、モネ『睡蓮』をデ・マリアとタレルのインスタレーション、安藤忠雄氏による建築とともに構成した「地中美術館」は建築ファンや現代アートファンから根強い人気を誇る。2010年からは直島を中心とした「瀬戸内国際芸術祭」が開催され、多くの観光客を集めている。
著者 秋元雄史氏 プロフィール
東京藝術大学美術館長・教授、練馬区立美術館館長
1955年東京生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科卒業後、作家として制作を続けながらアートライターとして活動。1991年に福武書店(現ベネッセコーポレーション)に入社、国吉康雄美術館の主任研究員を兼務しながら、のちに「ベネッセアートサイト直島」として知られるアートプロジェクトの主担当となる。2001年、直島のアイコン的作品である草間彌生『南瓜』を生んだ「Out of Bounds」展を企画・運営したほか、アーティストが古民家をまるごと作品化する「家プロジェクト」をコーディネート。2002年頃からはモネ『睡蓮』の購入をきっかけに「地中美術館」を構想し、ディレクションに携わる。開館時の2004年より地中美術館館長/公益財団法人直島福武美術館財団常務理事に就任、ベネッセアートサイト直島・アーティスティックディレクターも兼務。2007年、金沢21世紀美術館館長に就任。10年間務めたのち退職し、現在は東京藝術大学大学美術館長・教授、および練馬区立美術館館長を務める。
株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン
※あわせて読みたい
「地中ハンドブック」(筆者私物) 直島福武美術館財団 発行
0コメント